スペシャル

日が落ちてから、築地。


すこし時間があったので、築地本願寺へ。幸運にも、ちょうどライトアップのライトを新たに付け足そうとエスキスしているところ。光が当たる箇所によって、驚く程、本願寺の表情が変わっていた。柱に下から光があたり、柱頭が照らし出された時。人が何かを構築することに対する深い意思が見れ隠れしてしていたような気がした。


まだ時間があったので、勝どき橋へ。その様も好きだけれど、橋の中央に立って墨田川越しに眺める東京がすばらしい。東京がそのスケールを存分に発揮している。しかも、勝どき橋の中央部分は跳開する構造だったためか、異様に揺れる。そのおかげで全身揺れながらの夜景、これがまた、なんだか心地いい。


用を済ませ、新橋のコーヒー屋へ。友人がそのコーヒー屋で働く最後の日だった為。休憩を取ってくれたので、近所のとっておきの公園へ。その公園がびっくりのいい感じ具合を醸し出している。無名の質が溢れてた。今はもう廃墟みたいになっている元児童館?とその前庭みたいな構成で、そのスケール感が絶妙なのだ。もともとは何がしかの老中の屋敷跡らしい。前庭が少し盛土してあるのも効いていると思われる。時計の上にコケコッコがいるのもシビレルわ。うーん、都会のど真ん中に、あたかも時が止まっているような空間があったのだ。そしてそこは、当然のごとく猫の楽園となっていた。


そんなとっておきの場所として持っている友人は、妙に眩しく見えたのであった。


あーだこーだ言われている東京でも誰かにとってのとっておきの場所は無数にあるんだなー、きっと。そして、とっておきの場所はその人をよく表すんだろうな、きっと。そうだから建築や都市や環境って面白い、きっと。


映画「めがね」の黄昏れる能力ってのは、自分にとってのとっておきの場所を見つける能力であるとも言えるんじゃないかな。人や物質的な環境を含めて。




「もうすぐ夜があける」原田郁子